JTAA NEWS 掲載記事紹介②
- 2014/04/05 10:00
- カテゴリー:プロフィール
○2012年5月掲載
「コミュニケーションの苦手な人に交流分析の活用を」
インストラクター 西條ユキコ
【はじめに】
私の本業はアナウンサーですが、現在仕事の大半が講師で企業研修や短期大学校・専門学校などの講師として、マナーアップを中心にしたコミュニケーションスキルに関する内容の講義を、年間200回以上行っています。
【私の講師業の出発】
今から25年ほど前、IBC岩手放送のアナウンサーを退職後に遡ります。「お客様は神様です」が流行語になり、企業が接客の重要性に目覚めたものの、研修ができる講師が見つからない、そこで話すことに慣れているという理由からでしょうか、私の元に講師依頼が舞い込んで来ました。
無責任な仕事はできない性分の私は、2年間現代作法の勉強に通い資格取得後に、話しかたを中心にしたビジネスマナー講師の仕事を得意分野に持つフリーアナウンサーとなりました。
当時、折角身につけたスキルを発揮するべく企業に営業に行くと、「接遇はお金を出して習うものじゃないでしょ!」と言われたこともあり、岩手の企業の認識はまだまだ低かったと思います。今振り返るとかなり隔世の感があります。
さて、20年前のレジュメを見ると、
1、第一印象が大切
2、美しいおじぎ
3、話しかた・聞き方etc
これだけ見ると、今とほとんど変わらない印象なのですが、内容が大きく違います。それは、交流分析と出会ってから、研修内容がかなり充実したものとなりました。研修を行った企業の方から、「ほかの講師の接遇研修は形が中心なのに、西條さんのは心理面が入っていて解かりやすいし納得する」といわれ、受講者からの反応も一段と手応えを感じるようになりました。
では、具体的にどこがどんな風に変わったのかをご紹介します。
1、あいさつ
以前の研修では、“アイコンタクト”の大切さを伝える為に、「ながらあいさつをしていませんか?テーブルを拭きながら“おはようございます”、後ろを向いた状態で手を動かしながら“おはようございます”・・・これはあいさつとは言いません。では何というか?・・テーブルに話している、或いは壁に話しているのです。このようなあいさつをされた人はすっきりしません。アイコンタクトがあって“あいさつ”なのです。」こんな風に話していました。現在は、それに“交流分析のストローク理論”を加えて話しています。存在認知の重要性の説明です。
私達の心はストロークを求めている」ということをロープレで確認してもらいます。アイコンタクトの無いあいさつはストロークの量が少ないと気づく事ができます。
ストローク飢餓の状態になると、いらいらして「心理ゲーム」を仕掛けるなどの行為に出るなど、穏やかさが無くなることを、空腹が過ぎて飢餓状態になると腐った物でも食べてしまいたくなる、心の中もそうなることを説明します。
2、話しかた・聞き方
以前の教え方は、「相手を見て話しましょう、聞きましょう。聞く時は「相づち」を打ちましょう。話は、話し手聞き手の相互作業です。」と話していました。今は、これもストロークで説明できます。あいづちが返ってこないのはノーストロークです。そして、理解しているかどうかの大切な反応なのです。
メラビアンの法則の活用
アルバート・メラビアンの表現効果総量=言葉(7%)+話し方(38%)+表情(55%)
「話しかた・聞き方」で大切なのはどのように伝わるかということです。表情や語調の方が言葉そのものより印象が強いということを、語調や表情を変えて話してみせ、感じとってもらいます。
3、クレーム対応
クレームは「改善点」を教えてくれる情報であるということを基本的考え方として押さえた上で苦情電話に対応する心構えを数点挙げたあと、具体的な応答例に交流分析の対話分析を活用すると、より理解が進みます。
客 「ダメじゃないか!!」
店員「申し訳ありません」
CP → AC
お客さんに嫌な思いを抱かせた事実に対して、店側はまずは一旦謝ることが大切です。でも、いつまでも CP → AC 続くと、お客さんは手応えの無い相手にますますいらいらが募ってくるでしょう。頃合いを見て A に切り替えます。
店員「その時のことをもう少し詳しくお話し願います」
客 「あの時、こうだった・・」
(店員は状況説明を訊く)
店員「そうですか、こうだったのですね」
A → A 相補交流
(冷静さを取り戻す効果)
そして、クロージング
店員「それでは○○にするというのでは、いかがでしょうか」
(相手を尊重して上申する)
客 「はい、いいでしょう」
A → P 相補交流
交流分析を知らない受講者に対しても対話分析で説明しますが、基本は理解していただけます。
人生態度の活用
聴き手が共感しているなと感じると、話し手は心地良いし話しやすいものです。
OK―OK(第1の立場)
Not OK感の中では、話したいことも十分に話しきれません。たとえ自分とは違う意見を聞く時でも、『あなたの考えを聴く』姿勢が伝わると話しやすい雰囲気ができます。つまり、いつも第1の立場で聴くことを心がけると、話しがこじれるのを回避できます。
【最近思う事】
最近の若者はせっかく就職しても長続きしない、3年後までに50%辞めてしまうことが社会問題にもなっています。コミュニケーションが苦手で社会に適応できないのが問題ということで、卒業直前の学生や企業の新人を対象に、「マナー研修」「コミュニケーションスキル研修」の依頼が多くなりました。
依頼主から決まって言われることは、「あいさつ」のことです。「あいさつ」を注意したら翌日から出社しなくなった。給料を払いながら「あいさつ」から教えなければならないなんて情けない世の中になったものだ、と嘆く経営者もいます。中には、きつく注意したら、親が怒鳴りこんできた例もあります。
なぜ・なにが、コミュニケーション下手にさせたのでしょうか?
交流分析的に見ると、Aが育ってないのでしょうか?
Aは、身近な人をモデルに、納得してファイルし育つのですが、最近の子どもが育つ環境を想像すると、家庭の中はもとより、子どもが触れ合い交流するモデルになる人がかなり少ないのではないかと思います。
私が子どもだった頃は、我家にいろいろな人が来てお茶のみをしていましたし、母のお茶のみにくっついてよその家に出かけることもしばしばありましたし、近所のおじさんおばさんともっともっと仲良しだったし、買い物に行くと八百屋・魚屋・肉屋・行商の豆腐屋・・・、みんな顔見知りで、いろいろな人から声をかけてもらうことが多かったと思います。
母の表情やことば遣いを思い出してみると、舅や遠い親戚に対する少し遠慮した姿や自分の姉に対する感情丸出しの姿やこどもを相手にする親の姿ほか、TPOに合わせた姿を目の当たりにしておりました。私は7人家族の末っ子で育ちましたので、厳しい兄姉にも揉まれと思います。
そう、最近の若者たちは、大事に育てられて、揉まれた経験が少ないのではないでしょうか?
親になってからの私を省みますと・・、現在、私には24歳社会人3年目の息子と21歳大学4年生の娘がおります。家には姑が居て、時々姑の茶飲み友達が来ておりましたし、親戚の家に子どもを連れて行っておりました。しかし、遊びを含めて、確かに昔の子どもより人との接触の度合いが少なく育っています。
野球やサッカーや剣道などもしましたが、遊びではなくスポ少です。FCよりACが育つ環境だったのかもしれません。学校では、先生方の指導が人生態度の第1であって欲しいと願っています。第3の立場だったら、子どもは第2か第4の立場に行かざるをえないからです。
私は、子供達に社会人として通用するコミュニケーションスキルを身につけさせたかどうか心配ですし、我が子と同年代の人達にも同様に感じていますので、短大や専門学校の授業や新入社員研修で話すことは、単なるマナーや話し方だけではありません。
コミュニケーションツールの少ない環境で育った場合、接遇研修として「マナー・話しかた」だけにとどまらず、「交流分析」の理論を加えることが必要と考えます。そして、コミュニケーションが苦手で人生を生きにくくしている人々に「交流分析」を伝えて、充実した楽しい人生脚本に書き換えるお手伝いをして行きたいと思ってます。